シバ犬あっちこっち ~日本語教師のモノローグ~

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カテゴリ:<番外編 2017>( 42 )


2017年 02月 13日

2月13日  金菱 清(ゼミナール)編 『呼び覚まされる 霊性の震災学』 新曜社

 東北学院大学のゼミ生の皆さんによる、被災された方への聞き書きに基づいた報告集です。いずれも貴重な記録。語りあるいは記憶という側面からも、死者への接し方、悼み方という側面からも興味深い内容です。

 被災地でしばしばタクシードライバーが出遭うという「幽霊現象」をはじめ、死者とともに生きる被災者の皆さんの強さ、心象を描き、震災からの復興には「霊性」に基づく死生観が求められているとします。

 皆さんの語り、思いには共感できる部分があります。ただ一点だけ、ゼミ生の文章を編集したためか、「ご遺体」「遺体」という表記が混在したり、こなれていない文章がずいぶん目についたりするのが惜しいです。でも、それを越えてなお意義深い本です。

 まもなく6年目。初読は昨年でした。再読に値すると思います。

by 1220hagiwa | 2017-02-13 23:09 | <番外編 2017> | Comments(0)
2017年 02月 12日

2月12日  鴻池朋子 『どうぶつのことば』 羽鳥書店

 新潟で個展に偶然出くわしました。存じ上げなかった現代芸術作家です。でも、動物の皮を用いたパワフルで生々しい造形作品に目を瞠ります。痛切なメッセージを受け止めるキャパは私にありませんでした。しかし、気になる言葉が会場にちりばめられていました。そこで、売店でこの著作を手に取り確認し、買うことにしました。ちょっと高かったですが。

 たとえば、「日本語というマイノリティに生まれてよかった」「言語は呪縛です」のように、言語への考察が明快に示されていて、私に届きました。買った直後、ホテルに戻るなり読み始め、その夜は12時近くまでテレビもつけずに気になるところを拾い読み。著者が市井の人々の語りに向き合い、アートと言葉の間で苦闘している様子がうかがえて、感動さえ覚え、共感もしました。そんな私の心の動き、流れはもちろん、旅先の高揚感も作用してのことだと思います。旅先だから出会えた本の典型ともいえるでしょう。

 分厚いゆえ、とうてい読み通せません。それでいいと思います。

by 1220hagiwa | 2017-02-12 22:46 | <番外編 2017> | Comments(0)
2017年 02月 11日

2月11日  小山薫堂 『明日は心でできている』 PHP文庫

 うっかり視界に入ってしまったのが運の尽き。お気に入りの書店、ペーパーウォール@品川駅の店内を徘徊している間の出来事でした。敬愛する小山さんの本なら、と迷わずレジへ。

 メッセージ集で、帰りの電車で一気読み。それでいいのでしょう。ありがたい言葉、ヒント、いっぱい。口述筆記でも、いいんです。いい本ですから、また近いうちに、気になったときに、必ず手に取りますから。

 小山さんとは共通点がある、そう勝手に思い込んでいる私です。

by 1220hagiwa | 2017-02-11 23:18 | <番外編 2017> | Comments(0)
2017年 02月 10日

2月10日  岡本真一郎 『悪意の心理学』 中公新書

 「うっかり口にする」「偏見を抱く」「攻撃する」「こじれていく関係」「嘘をつく」…各章のタイトルを見るだに恐ろしげ。そして実際、読み進めるごとに冷や汗たらたら。ああ、確かに私もやってしまったこと、ずいぶんあります。そして、確信犯的にも無意識的にも言葉を操作している輩がたくさんいることも、現実を見れば容易に納得できます。日本語教育関係者にも示唆を与えるはずです。いや、学生には当然、必要でしょう。

 筆者は基本、人を信じているからこそ著したのだろう(と信じたいです)。前著『言語の社会心理学』が明快な良書だったことを覚えていますから。

by 1220hagiwa | 2017-02-10 22:42 | <番外編 2017> | Comments(0)
2017年 02月 09日

2月9日  小泉八雲 『明治日本の面影』 講談社学術文庫

 流麗な文体は、本人によるものなのか、はたまた訳者によるものなのか、わかりません。とにかく文章が美しいです。来日間もない八雲さんが、当時の日本を、少なからぬ憧れや幻影、そしてオリエンタリズムの目線で描いているわけで、やがて幻滅していくまでの幸福な時間にしたためられたものと言っていいのでしょう。

 そんな事実はさておき、描写が丁寧で、あたかも私がそこにいるかのような錯覚にとらわれてしまうこともしばしば。本人の文学的資質もさることながら、翻訳者の力量もいずいぶん寄与していると思います。

 本書は来日後の第一作『知られぬ日本の面影』の後半部分だとのことです。つまり前半があるわけなのですが、ただでさえ大部な本で、そちらに手を伸ばす余裕はまったくありません。そもそも本書でさえ半ばで途絶したまま。惜しいです。心理的なゆとりがあるときに、味わいつつ読みたい一冊です。

by 1220hagiwa | 2017-02-09 22:31 | <番外編 2017> | Comments(0)
2017年 02月 08日

2月8日  鈴木康明 『生と死から学ぶ』 北大路書房

 月イチでお話を伺っている先生の、しばらく前の著書。人柄が偲ばれる、個性的かつ丁寧なつくりです。大学の学生を意識し、図版、引用記事の類も多く、親切でわかりやすい一冊です。各章末に受講学生のレポート、そして受講生による一般書の推薦本が紹介され、温かさと工夫が伝わります。固さは微塵もありません。

by 1220hagiwa | 2017-02-08 22:09 | <番外編 2017> | Comments(0)
2017年 02月 07日

2月7日  畑谷史代 『差別とハンセン病』 平凡社新書

 当事者の皆さんの過酷な体験がつづられます。ただ、私にはそれらは決して目新しいものではなく、新聞連載記事をベースにしたため十分に編集しきれていないうらみのほうが強くあります、つまり、読みにくさが気になってしまうということ。

 それはさておき、後半部では国策としてのハンセン病患者の隔離と、患者の存在がいつしか「国辱」となり、やがて民衆からの有形無形の圧力にもなっていく様子が、資料を通して淡々と描かれています。90年代半ばに至り、ようやく廃止された「らい予防法」。それにはいくつもの複雑な要因が絡んでいたことがわかるのでした。

 その一方で、仮に「うつる病だったら」排除してもやむを得ないのか…という筆者の問いに、うまく答えるすべを私はもちません。

 でも、事情はどうあれ、とんでもない人権蹂躙がここ日本で起きていたことは忘れてはなりません。決して他人事ではなし。形を変え、別の側面で、日本各所で弱者への圧力は根深く、しっかり引き継がれているはずです。たとえば、部落問題一つにしても。

by 1220hagiwa | 2017-02-07 23:36 | <番外編 2017> | Comments(0)
2017年 02月 06日

2月6日  『別冊太陽 こわい絵本』 平凡社

 『あやしい絵本』に先立ち、一昨年に出た充実の一冊。慧眼の編者・東雅夫氏による抜群のセレクション。多様なトピックに分類、収録された本書さえあれば、こわい系の絵本探しに困ることはないでしょう。ページをめくるだけでワクワク。とっても楽しい。表紙を見るだけでもまったく飽きません。オールカラーゆえ、さすがに安くはないのですが。

by 1220hagiwa | 2017-02-06 23:38 | <番外編 2017> | Comments(0)
2017年 02月 05日

2月5日  正木 晃 『魔法と猫と魔女の秘密』 春秋社

 もちろん、「魔女の宅急便」をよく深く理解するための参考書です。魔女の存在は西洋ばかりかと思っていたら東洋にも魔女がいて、それが今の神社にもつながっていると知りました。その他その他、知らないことばかり。とっても難しい内容をものすごくかみ砕いて説明してくれます。猫に関する歴史も、初耳でした。映画をもっと知る役割を十分に果たします。ありがたや。

by 1220hagiwa | 2017-02-05 23:44 | <番外編 2017> | Comments(0)
2017年 02月 04日

2月4日  『別冊太陽 あやしい絵本』 平凡社

 「あやしい」にまつわる、魅力的な絵本がカラー版で徹底的に紹介されています。どれもこれも手に取ってみたくなります。50万円くらいあれば全部買えるのに。昨夏、「怪(かい)の日本語」という連続授業で利用、紹介しました。旅先から羽田に戻り、モノレールを降りたその足で浜松町の本屋に寄り、発作的に買いました。いい買い物だったと思います。ほぼ永久保存版。

 ちょうど学生の一人が『よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし』に関心を示していました。この本、発想がとんでもなく秀逸。抜群。絵本の想像力って、ものすごく爆発的。そして感動的でもあります。

 ですが、絵本という存在そのものを子供のもの扱いとする文化が、特にアジア圏では根強く蔓延(流布?)している現状はなかなか変わらないように見えます。これって、相当に望ましくないことではないでしょうか。つまり書籍文化の深みの有無、あるいは児童文化への認知の深さ、成熟度と関わる気がします。

by 1220hagiwa | 2017-02-04 23:12 | <番外編 2017> | Comments(0)