シバ犬あっちこっち ~日本語教師のモノローグ~

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カテゴリ:<番外編 2016>( 104 )


2016年 08月 17日

8月17日  中川右介 『角川映画 1976-1986 増補版』 角川文庫

 角川映画を初期10年間(私には最盛期に見える)を中心に概観します。「犬神家」に始まる大作路線からアイドル映画、そしてアニメへ。作品の内容紹介は最小限にとどめ、どのような過程で作られていったのか、3人娘をはじめキャストをどう選定したか、もろもろの背景、内情を具体的に説明しています。多くの資料に基づいて淡々と連ねていく文章は、いわば角川春樹氏のヒストリーでもあるよう。映画には素人の私ですけれど、当時のファンとしては十分に楽しめますし、合わせて当時の出版業界に非常に関心のある私には本当に興味深い一冊。ミステリ小説界の動きも、おもしろく読めました。

 5月から毎日つづってきた「番外編」も、手に取った本、コメントを寄せられそうな本がぼちぼち底をついてきたので、今日をラストに、今後は通常のペース(1週に1冊くらいならいいのですが)に戻します。

by 1220hagiwa | 2016-08-17 22:14 | <番外編 2016> | Comments(0)
2016年 08月 16日

8月16日  森 正人 『戦争と広告』 角川選書

 最近の記事だったか、先の大戦中の戦地での女性「アイドル」について触れたものを興味深く読みました。私の部屋の棚にも慰問団に関する本があったような…引っ越し以来、整理していないので行方不明です。

 本書は『アサヒグラフ』など多くの雑誌が伝えた写真、テキストから当時の国民がどのような印象を受け、それらがどのよう意図から作られたのかを明快に語ります。文章は平易で、わかりやすいです。ただ、これは今もなお、一見形を変えたように見え、実はしっかりと、脈々と息づいています。例の『永遠の0(ゼロ)』しかり、九段にある記念館しかり。昨年そこを訪ねたとき、バランスを欠いた展示に不満を覚えたものです。

 そういえば、本文でも触れているように、一昨年、安保法成立に向けてホルムズ海峡の有事云々を説く際、首相はボードを使いました。なんであんなかわいらしいイラストを?と違和感を抱いたものでしたが、あれ以来、状況は一変。説得力を欠いたまま時間が過ぎているような気がします。

by 1220hagiwa | 2016-08-16 23:38 | <番外編 2016> | Comments(0)
2016年 08月 15日

8月15日  エラ・フランシス・サンダース 『翻訳できない世界のことば』 創元社

 一応は絵本の体裁をとっていますが、さにあらず。第一印象は、本の可能性を感じるなぁ、というものです。本にする素材は、こんなところにもあるんだなぁ、と。それと、「まえがき」の内容がいいです。表記不能の言語がいくつか紹介されているのも、楽しい。

 日本語でいえば、「ぼけっと」「木漏れ日」が該当する、つまり、多言語では翻訳できないそうです。「わび、さび」はそうだろうと思っていましたが、なるほどねぇ。学生にも訊いてみようかな。

 それにしても、作者の柔軟なセンスに脱帽。素敵な人なんだろうなぁ。きっと。

by 1220hagiwa | 2016-08-15 23:57 | <番外編 2016> | Comments(0)
2016年 08月 14日

8月14日  『昭和40年男 8月号』 クレタパブリッシング

 特集「俺たちの角川映画」。これは買うでしょう。

 ある時期の私を魅了し続けた角川映画。「犬神家の一族」「人間の証明」「復活の日」といった大作、「セーラー服と機関銃」「探偵物語」「時をかける少女」といったアイドル路線、そして「蘇える金狼」「野獣死すべし」といったハードボイルド路線の大きく3つに分けて取り上げています。スチール写真が満載。同時代を生きてきたものとしては、懐かしくも興味深い記事です。関連の文庫本も近々購入予定です。

 明日からの「本編」では、ここ数日、今回の特集上映で30年くらいぶりに観た作品の数々について、今のところ一週間ほど連続して触れる予定です。
 

by 1220hagiwa | 2016-08-14 22:17 | <番外編 2016> | Comments(0)
2016年 08月 13日

8月13日  ミクロ生物選定委員会 編 『夢に出そうなミクロ生物』 扶桑社

 夢には出ませんでした。しかし、恐るべき写真の数々に、声が出ません。就寝前、厳禁。

 それに比べたら、ヒトの姿、その何と無個性で、のっぺりと、つまらないことよ。おかしいくらいです。

by 1220hagiwa | 2016-08-13 23:00 | <番外編 2016> | Comments(0)
2016年 08月 12日

8月12日  鳥居 『キリンの子 鳥居歌集』 KADOKAWA

 私の手を包んでくれた温もりを覚えています。かけてくれた言葉、声のもつ優しさも。周囲の人はどうしてこんな素敵な人を苦しませ、傷つけずにはいられなかったのでしょうか。たとえやむをえず自死を選んだのだとしても。

 「友達の破片が線路に落ちていて私と同じ紺の制服」

 こんな句ばかりではありません。多くはすでに透徹し、超越した視線さえ感じられます。そこから生まれた、どこか愛しささえ覚える句の数々が連なります。

 サイン会会場フロアの一階下でなんとなく棚を眺めていた私は、到着したばかりの彼女に一目で気づきました。トレードマークのセーラー服。でも、下品に見やることなく、気づかないふりをしてトークショーまで待っていました。さてその会場で紡ぎ出されたのは、凄惨な体験を生き抜いてきた人とは思えないほどの、柔らかなメッセージでした。慎みをわきまえていて、とっても聡明な人。

 応援しています。そして、いつかどこかの夜間中学で会えるかもしれません。

by 1220hagiwa | 2016-08-12 20:41 | <番外編 2016> | Comments(0)
2016年 08月 11日

8月11日  小松和彦 編 『ジャパノロジー・コレクション 妖怪 YOKAI』 角川文庫

 奥深い妖怪文化のうち、妖怪画に焦点化した、いわば妖怪画の博覧会。古典的なものからざっと紹介しています。解説は最低限にとどめ、できるだけ作品を取り込むことに腐心しています。ながめて楽しい一冊。ただ惜しいことに、文庫判なので細かいところが見えません。

 それにしても、ファンタスティックで、豊かな画ばかり。日本の画って、まことに多彩ですなぁ。

by 1220hagiwa | 2016-08-11 21:04 | <番外編 2016> | Comments(0)
2016年 08月 10日

8月10日  平野啓一郎 『「生命力」の行方』 講談社

 自分らしく生きる、それには「分人」の思想が必要。そうした部分ももちろん心に響きますが、社会、メディア、あるいは文学へと語りが広がります。厚い一冊で、読み切ることができませんでした。根性なしの私。読んだ中では、3.11をめぐる森達也さんほかとの対談が刺激的でした。筆力があるだけでなく、マインドが柔軟で、人に寄り添える誠実な方なんだなぁ。

by 1220hagiwa | 2016-08-10 22:27 | <番外編 2016> | Comments(0)
2016年 08月 09日

8月9日  おかべたかし 『似ていることば』 東京書籍

 人気シリーズ。授業で類語の区別を聞かれた時のために…というさもしい理由以前に、楽しい本だから買いました。そして事実、今まで教室で使ったことはありません。

 企画がシンプルで、嬉しい作り。いちおう言葉を教える者のはしくれとしては、だいたいが区別、説明できるのですが、「利用」と「使用」、「混ぜる」と「交ぜる」など、やっぱり画像の印象の強さにはかなわなないようです。

by 1220hagiwa | 2016-08-09 23:54 | <番外編 2016> | Comments(0)
2016年 08月 08日

8月8日  オルダス・ハクスレー 『すばらしい新世界』 光文社古典新訳文庫

 ところどころにユーモアこそ漂えど、実は恐ろしいディストピア小説の古典。少しまどろっこしいところもありますが、そこが重々しさを与えています。読み続けるパワーがなく、あいにく半分ほど進んだところで途絶。全編に漂う息苦しさに、今の日本、この時代にどこか共通する気配を感じるのは、うがちすぎでしょうか。すばらしい日本、美しい日本。あれ、この道しかない、ってどこかの軽い首相が言っていたような、恐ろしい話です。そしてそれは言いっぱなしで、どこかに捨て去られています。

by 1220hagiwa | 2016-08-08 23:43 | <番外編 2016> | Comments(0)