9月26日  小川洋子 『まぶた』 新潮文庫

 五感を刺激する短篇集。
 読み手をのっけから異境に誘い込むテクニック。とめどなくひそやかで、エロチックな作品を紡ぐことのできる方です。そのエロチックさとは、「性」のみならず「生」と「死」のことでもあり、3つすべては分かちがたいもの。ベストセラー『博士の愛した数式』にも同様の匂いがあります。
 短篇の切れ味は、さながら上等なミステリ。背筋が凍るような、絶妙の緊張感と冷酷さには、精密に計算されたしたたかさが感じられます。
 先日の江國さんもそうですが、ひょっとして現代を代表する作家の一人かもしれません。ただ、こっちの方が、ずっとクールでざっくりきます。
by 1220hagiwa | 2007-09-26 22:26 | <番外編 2007>