8月9日  『レベル別日本語多読ライブラリー レベル4 vol.1&2』 アスク

 この業界で注目されているシリーズ。中級相当のレベル4で出ている5冊セットの2つ、計10話に目を通しました。「高瀬舟」「杜子春」「走れメロス」といった文豪の短篇のほか、小泉八雲の怪談、さらに書下ろしの論説文的なものやガイド的なものまで、バラエティ豊かな文章が収録されています。文型も初級で十分対応でき、語彙が多少中級的かなと思えるほどで、全体に十分に配慮されています。挿絵も適切かつ楽しく、理解の助けとなるものが満載。中級と銘打ってはいますが、学習者によってはすんなり読めるものがありそうで、達成感が得られるでしょう。退屈もしないはず。原作を簡約する多読研究会の皆さんのご苦労がしのばれる力作です。
 惜しまれるのは、vol.2に「相撲」「東京を歩こう!」といった、似たタイプが重なっていること。後者では両国が紹介され、前者ではいまホットな「朝青龍」が。もし引退でもしたら、どうするのかなと心配。特に後者は首都圏に住んでいない学習者にとって関心外の可能性もあります。ついでに言えば、「朝青龍」の「龍」の字の右下の三本線が二本線になっているイラスト表記部分。イラスト本体ではなく、文字が加わった部分のこういった小さなミス、実は他のテキスト類でもしばしば見られます。こんなことで案外評価が下がったりすることもあるので、イラストの役割は大きいです。
 偶然ですが、原爆を受けた医師・永井隆さんの文章が載っています。長崎・広島への原爆投下の日に挟まれた時期にこの文章に接したのは、何かの縁でしょうか。
by 1220hagiwa | 2007-08-09 22:09 | <番外編 2007>