1月29日  三崎亜記 『となり町戦争』 集英社文庫

 出だしから、ひたすら、ひたすら底に流れる不気味なトーン。確かに怖い。では、いったい何が起こるのか…その期待と緊張感を中盤まで持ち続けていたのですが、結果的には裏切られたような感じです。不気味さそのものが著者のメッセージとするのなら、なるほどと思いますが、いささかパンチが足りないと思いました。ですが、さわやかな読後感もそれなりにあり。主人公の「痛み」や日常の延長としての戦争観に共鳴するところもありました。
 ストーリーテラーとしての才能の片鱗を見せてくれたデビュー作。説明過多かと思えるような記述やぎこちなさも初々しく、その点は好印象。女性がもっと描けたらいいのですが…なんて。近日映画が公開されるそうですが、う~ん、正直、見たくない。
 ふいに思い起こしたのは、村上龍『海の向こうで戦争が始まる』でした。
by 1220hagiwa | 2007-01-29 23:40 | <番外編 2007>