2月12日  鴻池朋子 『どうぶつのことば』 羽鳥書店

 新潟で個展に偶然出くわしました。存じ上げなかった現代芸術作家です。でも、動物の皮を用いたパワフルで生々しい造形作品に目を瞠ります。痛切なメッセージを受け止めるキャパは私にありませんでした。しかし、気になる言葉が会場にちりばめられていました。そこで、売店でこの著作を手に取り確認し、買うことにしました。ちょっと高かったですが。

 たとえば、「日本語というマイノリティに生まれてよかった」「言語は呪縛です」のように、言語への考察が明快に示されていて、私に届きました。買った直後、ホテルに戻るなり読み始め、その夜は12時近くまでテレビもつけずに気になるところを拾い読み。著者が市井の人々の語りに向き合い、アートと言葉の間で苦闘している様子がうかがえて、感動さえ覚え、共感もしました。そんな私の心の動き、流れはもちろん、旅先の高揚感も作用してのことだと思います。旅先だから出会えた本の典型ともいえるでしょう。

 分厚いゆえ、とうてい読み通せません。それでいいと思います。
by 1220hagiwa | 2017-02-12 22:46 | <番外編 2017>