8月23日  片岡義男 『白い指先の小説』 毎日出版社

 この人のクリアーな作品世界は、ひどく私を高ぶらせるとともに、静謐感で満たします。快感と云ってもいいでしょう。

 5編の主人公たちは、みな孤独。でも、明確な意思を持ってすっきりと、そしてしなやかに生きています。美しい。

 感銘を受けるのは、筆者の「ことば」への姿勢。ことばは自らを表現する、なんて通り一遍な甘い見方なんぞは許容しない、徹底して厳しい視点が表明されている「あとがき」には、私のちょろいスタンスや世間一般の常識的な見方は吹き飛ばされてしまいます。『日本語で生きるとは』をはじめとする日本語ないしはことばへの論考集を著しているだけに、説得力に富みます。やわな作家より、はるかに透徹した潔く輪郭のはっきりした思考が提示されていて、うなります。
by 1220hagiwa | 2011-08-23 23:47 | <番外編 2011>